2018年にベストセラーとなった伊藤 羊一氏著「1分で話せ」を紹介します。
本書は「伝わる話し方」を根本的な疑問から応用テクニックまで幅広くカバーした一冊です。
どんな本?
著者の伊藤 羊一氏はかつてソフトバンクアカデミア(孫正義氏の後継者を見出し、育てる学校)に所属していました。
孫正義氏へプレゼンし続け、国内CEOコースで年間1位の成績を修めたプレゼンのスペシャリストです。
本書ではプレゼンの極意をシンプルにわかりやすく伝えています。
「伝える」ための基本事項
プレゼン力=「人に動いてもらう力」
人は相手の話の80%は聞いていません。
したがって、どんなに完璧なプレゼンをしても自分の考えが100%伝わるということはありえません。
そのため、人を動かすためには、1分で話せるように話を組み立て、伝える必要があります。
伝える相手を具体的にイメージする
プレゼンにおいては、「何のためにプレゼンするのか」を明確に意識しなければいけません。
それを言語化すると、「誰に」「何を」「どうしてもらいたい」という構造になります。
ポイントは「誰に」伝えるのかを考えることです。
聞き手を具体的にイメージできれば、その人たちの反応を想像しながら準備を進めることができます。
つまり、聞き手にあわせて、話す内容、言葉遣い、話し方などを考えていくと言うことです。
ゴールを決める
プレゼンは、ゴールを達成するためにあります。
したがって、聞き手にどうしてもらいたいのかを見定めたうえで、ゴールを達成するために何をすればいいかを逆算して考える必要があります。
ゴールとは、プレゼンを通して、聞き手をどのような状態にしたいのかということです。
賛成してほしい、何らかの意見を表明してほしい、動いてほしいなど、具体的にどこまでしてほしいのかをはっきりさせます。
なお、「理解してもらう」ことをゴールにしてはいけない。
「営業部の○○さんにかけあってほしい」など、「理解した上で何をしてほしいのか」が必要です。
1分で伝える(左脳を刺激)
「結論」と「根拠」でロジカルに考える
話には結論と根拠があり、その結論を一番上に、根拠をその下に並べたものが上のピラミッドストラクチャーです。
話には「結論」と「根拠」があります。
結論を一番上に、根拠をその下に並べるとピラミッドのような形になります。
このピラミッドがしっかり組めていれば、話が不必要に長くなったり、伝わらなくなったりすることはなくなります。
「1分で考えよ」の根幹はここにあります。まず伝えようとすることの骨組み、つまり、結論と根拠のセットを構築します。
この基本の型にはめて考える癖をつけておけば、説得力のある話し方ができるようになります。
相手を動かす「結論」を示す
ビジネスでは「結論を先に話せ」とよく言われます。確かにその通りですが、そもそも「根拠」と「結論」を混同している方も多いのではないでしょうか。
企画をプレゼンする場合、「こういう企画である」と「この企画は売れる」のどちらが結論でしょうか。
この場合は、「この企画は売れる」が結論です。さらに言えば、「この企画は売れるからやりましょう」が結論になります。
プレゼンは相手を動かすためのものですから、相手を動かす方向を示すのが「結論」だと考えましょう。
「根拠は3つ」で相手に伝え、納得させる
人は根拠がなければ納得しません。
本書では根拠は3つを目安に用意すると良いと言っています。
皆さんもセミナーに参加して、講師が「理由は3点あります」と指を3本出したタイミングでメモを取り始めるといった経験があるのではないでしょうか。
そして3つの根拠は、結論を言った後に述べるようにしましょう。
自分の頭の中にしっかりと「結論」「3つの根拠」という骨組みがあれば、相手にも伝わりやすくなります。
結論と根拠をつなげる
結論と根拠の骨組みができていれば、1分で話すことも難しくないはずです。
これをより伝わりやすくするためには、その骨組みを「ロジカル」に作ることが必要になります。
「ロジカル」とは、意味がつながっているということです。
結論と根拠を述べる際は、聞き手にとって意味がつながっていることを常に意識しましょう。
声に出して読んでみる、他の人にも聞いてみるなどして、意味がつながっているかどうかを確認することをおすすめしています。
1分でその気になってもらう(右脳を刺激)
相手の頭の中にイメージを作る
正しいことを言うだけでは人は動きません。
聞き手の感情を揺さぶる必要があります。
そのためには、聞き手の想像力をかき立て、頭の中にイメージを作ってもらうことが重要です。
たとえば、マンションを売る営業マンのセリフとして、どちらが伝わるでしょうか。
A案 「駅から3分。公園も近い閑静な住宅街の物件です」
B案 「木や花の多い公園が近いので、小さいお子さんがいらしたら、喜びますよ」
B案であれば、「朝、はつらつと自宅を出て、駅に向かう自分のイメージ」や「奥さんが子どもと、敷地内にある公園で、笑顔で遊んでいるイメージ」などが頭の中に生まれます。
このように、聞き手にイメージを抱かせるためには、まず、ロジカルに事実を認識してもらわなければなりません。
そういったことを認識したうえで、そこに自分をあてはめて考えてもらう必要があります。
そこに自分をあてはめてもらえば、自動的に聞き手の頭の中で想像が膨らんでいきます。
聞き手の頭の中でイメージを膨らませる方法
イメージしてもらうために「たとえば」と具体的な事例を示しましょう。
この一言があれば、聞き手が抱くイメージが具体的になります。
さらに「想像してみてください」と一言添えると、聞き手がイメージの中に入り込んできてくれるだけでなく、聞き手自身の頭の中でイメージを膨らませてくれます。
1分で動いてもらう
相手の立場に立って話す
「伝えよう」とするだけではうまくいきません。一方的に「自分がこう思う」ということを伝えても、相手は動きません。
相手から見て自分がどう映っていて、どんな話をしてほしいのかを感じながら、客観的な自分が自分を見ながら言うべきことを決めていくことが大切です。
本書では「リトル・ホンダ」とサッカーの本田圭祐選手がACミランに移籍する際のエピソードを交えて説明していましたが、要するに「俯瞰的に物事を観察する」ことが大切であると言っています。
まとめ
私自身もIT業界の営業職のため、人前で話す機会は多くあります。
本書に書かれている事で実践できていた所はスッと腹落ちしました。
また、結論から話しているつもりでも、場の雰囲気に飲まれて、説明が長くなったり同じようなことを繰り返し説明したりと上手くいかない時もあります。
それはきっと「相手の立場に立つ」ことがまだまだ足りていないのだなと反省しています。
プレゼンだけでなく、常にコミュニケーションを図っているビジネスパーソンなら、学になる一冊です。
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