日経新聞「一物多価」の経済実現へ デジタル金融の実相

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日本経済新聞に『「一物多価」の経済実現へ デジタル金融の実相』という記事が掲載されていたので紹介します。

この記事の著者はイェール大学助教授・成田悠輔氏です。ご本人のTwitterでも「珍しく真面目な文章を書きました」と呟かれていました笑。

記事の内容

お金を「過去の経済活動の記録」とした切り口で、将来の価格・お金の在り方について書かれています。

1万円札が手元にあるとします。これはあなたが「過去」に何かのサービスしたり物を作った。それは誰かが欲しいという物だったので、その人はお礼に1万円札をくれた。
この1万円札は過去にあなたが貢献した痕跡、すなわち「過去の経済活動の記録」という事になります。

経済活動の実態と記録が再び収束し、太古に先祖返りする

記録としての貨幣の必要性は時と場合により異なります。

時間とともに経済活動の実態と記録がどう変遷してきたかをイメージ化したのが下図になります。

出典:日本経済新聞

太古は、経済活動は小さく、実態と記録のズレも小さかったと想像できます。贈与や交換のほとんどが小さな村落や街に閉じていた為です。そんな環境では経済活動のほとんどを記録することもできたでしょう。

やがて経済が爆発します。遠くまで出かけて商売したり、人を巻き込み組織を作ったり、海の向こうまで出かけて貿易したり。こうなると、爆発する活動のすべてを手作業で台帳に記録することはできなくなります。

そして現在。日常生活では、ほとんどの決済や取引を現金ではなく、キャッシュレスやカードで済ませるようにりました。そしてデジタル決済は、すべてデータとして記録されます。経済の実態と記録が再び収束し始めたのです。

デジタル村落経済の発生は「お金の価値が下がっていく」という帰結をもたらします。経済の実態の大半を記録できる太古の台帳経済や現在のデジタル村落経済では、実態と記録のズレを埋める装置としての貨幣の必要性が下がるからです。

経済履歴データで価格が多元化・個人化

この潮流の先に待つのは、1次元化され匿名化されたお金が支える「一物一価的な匿名価格システム」の衰退かもしれません。

物やサービスに全員共通の値段があり、その分だけお金を払えば購入できます。私たちが慣れ親しんだこうした価格システムが支配的なのは、個人ごとに履歴をたどりその物やサービスを手に入れるに値する人かどうかを判定することがデータ的にも計算量的にも難しいからです。しかし、記録が実態に追いつくにつれて、データと計算の制約も緩みます。

その一歩先に訪れるのは価格の多元化・個人化です。あらゆる商品やサービスの価格が、個人ごとの記録に基づき個別最適化されて、価格が人により異なる一物多価の世界が現れます。

こうなると、価格やお金の意味が変容していきます。同じ一万円の購買力が人により異なり、お金は過去の経済活動の記録をより多角的に表現する装置へと脱皮します。

最終的には、価格やお金が消失した経済も想像できます。価格を介さず、個々人の属性と過去の活動履歴に基づき、その人が何をしたり手に入れたりすることが許されるかが直接決まるような経済像です。

まとめ

現在、私たちの暮らしの中の一物多価(ダイナミックプライシング)は、季節や繁忙期により変化する遊園地やホテル、航空チケットに限られています。

ですが今後、ブロックチェーンで個人の記録を管理する様になれば、成田氏の言うとおり、価格やお金が消失した経済がやってくるのもそう遠い未来ではないかもしれません。

過去のブログで紹介した伊藤穰一氏「テクノロジーが予測する未来」でも、取引履歴の改竄が事実上不可能であるブロックチェーンには高い透明性と信頼性があることから、「何をしてきたのか」という活動履歴が評価、信頼につながると言っています。

人はすぐに変わることはできません、、、普段から自分自身の活動に信念を持って行動することが、来るべき未来への備えになるのかも知れません。

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